レンジローバースポーツ P550eと過ごした1年〜美しき巨躯の光と影〜

新たな相棒、パナメーラGTSの納車がいよいよ7月5日に決まりました。 一つの節目を迎える前に、この約1年間、私の日常と長距離移動を支えてくれた「レンジローバースポーツ P550e」の足跡を振り返っておきたいと思います。

英国のモダンラグジュアリーを体現したこのPHEVは、私に多くの感動を与えてくれたと同時に、現代の自動車が抱える「デジタルと物理のジレンマ」を教えてくれた一台でもありました。

お別れにあたって、その「良いとこ」「悪いとこ」を率直に書き残しておきます。

◯ 良いとこ:五感に訴えるデザインと、全方位の余裕

1. 内外装における「デザイン」の勝利

モダンラグジュアリーを標榜するランドローバーのデザインは、やはり見事の一言に尽きます。無駄を削ぎ落としたステルス感のあるエクステリアと、上質でクリーンなインテリア。乗るたびに、そして降りて振り返るたびに、その美しさには惚れ惚れさせられました。

2. 「コマンドポジション」がもたらす圧倒的な運転しやすさ

全長5m弱、全幅2mに迫る巨躯でありながら、ステアリングを握ると不思議なほど扱いやすいクルマでした。伝統のコマンドポジションによって視界がパノラマのように開けており、ボディの四角い見切りが完璧に把握できるからです。サイズという数字のプレッシャーを、見事な設計で打ち消しています。

3. 電動域でも隙のない走行性能

システム最高出力550psを誇るパワートレインは、いかなる場面でも過不足がありませんでした。特に驚かされたのは、モーター単体での走行時です。2.8トンもの車体を、BEVモードのままでも一切のストレスなく、滑らかに、そして力強く加速させる調律の妙には恐れ入りました。

4. 際立つ希少性とブランド価値

街で見かける機会は決して多くありません。この「他と被らない」希少性と、レンジローバーというブランドが持つ独特の気品は、所有欲をこれ以上ないほど満たしてくれました。

5. 雪道での圧倒的な安心感と走破性

さすがに本格的なオフロードに踏み込む機会はありませんでしたが、冬の雪道での走破性は、私がこれまで経験した車の中でも「過去最高」と言えるレベルでした。どんな悪路でも何事もないように進んでいく四駆性能の高さには、大きな信頼感を寄せることができました。

✕ 悪いとこ:美しさがもたらした代償と、2.8トンの物理法則

1. デザイン最優先による「使い勝手」の割り切り

内外装のノイズレスな美しさと引き換えに、日常のインターフェイスは少し我慢を強いられました。格納式のドアハンドルは時にまどろっこしく、多くの操作が集約されたタッチパネルは画面遷移のレスポンスが一歩遅れます。直感的にブラインドタッチができないもどかしさは、最後まで完全に馴染むことはありませんでした。

2. 高すぎる目線という物理的ネガ

コマンドポジションの裏返しでもありますが、絶対的な運転位置が「高すぎる」と感じることがありました。ゆったり流す分には極上ですが、速度域が上がった際や、路面状況によっては、重心の高さからくる特有の挙動が物理的な違和感として顔を出すことがありました。

3. 「2.8トン」に気を遣う日常

PHEVとしての巨大なバッテリーを積む代償として、車両重量は2.8トンに達します。加速時や、特にブレーキング時には、その凄まじい慣性重量を常に頭の片隅に意識させられました。走る、曲がる、止まるのあらゆる局面で、クルマの「重さ」に対して神経を使う場面が少なからずあったのは事実です。

4. 気温低下時のBEV運用制限

実質100% BEV運用できたのはGWを過ぎてから9月下旬頃まで。ある程度気温が下がると、バッテリーが十分残っていても強制的にエンジンが始動してしまいます。前述の通り雪道は得意なものの、1年の大半は「完全なBEV」としてのスマートな運用が制限されてしまうのは、ハイテクPHEVとしては少し寂しい仕様でした。

5. 維持における「コスト」の高さ

このクラスを維持するにはそれなりの覚悟が必要ですが、驚いたのは冬の準備です。「22インチのスタッドレスタイヤ」を組もうとした際の見積もり価格には、思わず目が丸くなりました。ここまでくると、もはや金覚感覚が麻痺してしまいます。

6. リセールの現実

これだけのラグジュアリーとテクノロジー、そして高い維持費がかかる先進的なモデルでありながら、市場におけるリセールバリューの厳しさは、やはり輸入SUVの、特にPHEVの宿命と言わざるを得ません。

総括:SUVの最高峰が教えてくれたこと

レンジローバースポーツ P550eは、間違いなく一級品のラグジュアリーカーでした。重厚な乗り味と静粛性、そして英国的な仕立ての良さは、冬の悪天候をも含めて、ロングドライブにおいて無類の安楽さと安心感をもたらしてくれました。

正直なところ、「これ以上のSUVはもうない」と思わされるほどの完成度です。しかし同時に、このクルマでSUVの最高峰を味わい尽くし、その光と影(コストや物理的制約)をリアルに体験したからこそ、「SUVはもう十分かな」という気持ちに綺麗に区切りがついたのも事実です。

だからこそ私の心は、再び「低重心で、ドライバーの意志に一瞬の遅れなく応えるスポーツサルーン」へと、自然に傾いていったのかもしれません。

約1年間、素晴らしい世界を見せてくれたレンジローバースポーツに感謝を。 さあ、次はV8ツインターボ、パナメーラGTSの時間が始まります。

コメント