ポルシェにおける「GTS」といえば、誰もが共通のイメージを思い浮かべるはずです。
外装は鮮烈なカーマインレッド。そこに黒系のRace-Texを配し、真っ赤なステッチ、カーボンパネル、そしてブラックデカールをあしらった、もっともスパルタンで尖ったスポーツモデルの象徴。ポルシェジャパン自らが「こういう仕様のGTSはいかがですか?」と、日本の高級車市場へまったく新しい「大人の提案」を投げかけているかのような、パナメーラGTSの別の魅力だったのです。
■ エクステリア:陰影を愉しむ、大人のアスリート
まず外装に選ばれているのは、GTSの定番であるカーマインレッドとも、昨今のポルシェで流行りのソリッドなグレー系(クレヨン等)や、最近よく街で見にする未来的なアイスグレーメタリックとも一線を画す、ドロマイトシルバーメタリックです。しかし、このシルバーを「あえて金属の冷徹な塊感と陰影を最も美しく強調するためのベースなのだ」と受け入れた瞬間、その後に続く足元の選び方の異常なまでのこだわりが、一気に生々しい説得力を持って脳内に流れ込んできました。
新型GTSといえば、レーシングカー直系のメカニズムである「センターロック式のホイール」が標準装備されるのが最大のトピックです。普通なら、そのGTSの証とも言えるセンターロックをそのまま誇らしげに履くはずです。
しかし、この個体の仕様表を見て目を疑いました。 なんと、その標準のセンターロックをバッサリと脱ぎ捨て、あえて5穴タイプの「21インチ Panamera SportDesign ホイール」へと変更されているのです。 さらに、その5穴ホイールを「Exclusive Manufaktur」の手によってダークシルバー塗装へと仕立て上げる念の入れよう。
しかし、この個体の仕様表を見て目を疑いました。 なんと、その標準のセンターロックをバッサリと脱ぎ捨て、あえて5穴タイプの「21インチ Panamera SportDesign ホイール」へと変更されているのです。 さらに、その5穴ホイールを「Exclusive Manufaktur」の手によってダークシルバー塗装へと仕立て上げる念の入れよう。
そう、このクルマは、GTSならではの「これみよがしなレーシーさ」を足元から徹底的に排除し、あえて上品なクーペサルーンとしての品格を最優先するために仕立てられている。そのためのベースとして、ドロマイトシルバーというキャンバスが絶対に必要だったわけです。ボディのシルバーから足元のダークシルバーへと繋がる、絶妙に計算されたグラデーション。
極めつけに、ブレーキキャリパーは標準のレッドから、わざわざハイグロスブラックへ変更され、ドアハンドルやミラー下部もエクステリアカラーで綺麗に同色化。
「GTSなんだからセンターロックで、キャリパーは赤で、足元は黒で引き締める」というお決まりのルールを、何一つとして選んでいない。このドロマイトシルバーというハードルを越えた先に見えてくる徹底的な引き算の美学、本当にタダモノではありません。
■ インテリア:これぞ、私が求めていた「スムースレザー」の極致
そして、私が最も衝撃を受け、激しく心を揺さぶられたのがインテリアです。 ドアを開けた瞬間に広がるのは、ブラックと「カラハリ」のツートンレザーインテリア。そう、ポルシェジャパンは、GTS標準のRace-Texをバッサリと脱ぎ捨て、全面をスムースフィニッシュレザーで包み込んできたのです!
「カラハリ」と呼ばれる上品なベージュ(砂漠の砂を思わせるカラー)は、シルバーの外装と相まって、まるでモダンなホテルのラウンジのような洗練された明るさを室内に満たしています。
スポーツクロノの文字盤(デジタルレブカウンター)が、内装色に合わせてカラハリに変更されている。 さらに、シートベルトまで、わざわざカラハリに変更されている。この辺は定番のカラーコーディネイトですね。
一方で、GTSとしての走りの血統を示すために、ステアリングホイールだけは標準装備のRace-Tex(ヒーター付きGTスポーツ)が残されている。手を握る部分だけはレーシングカーのソリッドな感触を残し、それ以外の空間は極上のスムースレザーで豊かに満たす。
さらに、足元にはマットカーボンのイルミネーテッドドアシルガードが奢られており、夜間にドアを開けた瞬間に、秘めたるハイパフォーマンスモデルであることを静かに主張する。
■ メルセデスSクラスやレクサスLSへの、ポルシェからの「挑戦状」
これまでのパナメーラGTSは、911やケイマンに乗っていて、どうしても4座(4人乗り)が必要になったポルシェユーザーが「走りだけは絶対に妥協したくない」と選ぶためのモノでした。しかし、この初期導入仕様(2025年モデル)の構成を見る限り、ポルシェジャパンが狙っているターゲットは全く別のところにあります。それは間違いなく、メルセデス・ベンツSクラスやレクサスLS、あるいはBMW 7シリーズといった、世界の最高峰ラグジュアリーセダンを検討している層です。
彼らがセダンに求めるのは、圧倒的な静粛性、どこまでも滑らかな乗り心地、精度感、清潔感、そして何よりドアを開けた瞬間にオーナーを満たす「五感に訴えるラグジュアリー」です。
Sクラスの「ショーファードリブン」的なコンフォート感や、LSの緻密な設えに慣れ親しんだドライバーであっても、このダッシュボードまで美しく覆い尽くしたスムースレザーの質感と、カラハリの洗練された配色を目にすれば、「なるほど、ポルシェが作るとラグジュアリーはこうなるのか」と、一発で納得せざるを得ないクオリティに達しています。
■ 「快適なセダン」の皮を被った、純V8という劇薬
さらにニクいのが、「最高峰の快適なセダン」としてSクラスやLSの牙城を崩しにかかっておきながら、その中身はハイブリッドでもダウンサイジングターボでもない、最高出力500馬力を誇る4.0リッターV8ツインターボだという事実です。快適性やフラットライドの極致(アダプティブエアサスペンション)をこれでもかとアピールして安心させておきながら、いざとなればV8の重低音とともに、一瞬で302km/hの世界へと誘う。
それでいて、このGTSは、オプションをこれだけ贅沢にてんこ盛りにしても、合計金額はターボより安価に収まっている。もちろん大金ですが、手に入る世界を考えれば、これほど理にかなったパッケージはありません。
「そろそろ、ただ静かで快適なだけのセダンには退屈していませんか?」
ポルシェジャパンが仕掛けたこのGTSは、ライバルたちに対する、あまりにも知的で、そして最高にエモーショナルな「大人の提案」そのものでした。
まさか、M4の質感にがっかりし、パナメーラのエンボスレザーに頭を抱えていた私の前に、インポーター自らがこれ以上ない回答を仕込んだV8のGTSが、現物(しかも即納!)として静かに佇んでいるなんて。
画面を見つめる私の指は、すでにポルシェセンターの営業氏へメッセージを送るために動き始めていました。
「例のGTSの件ですが、明日、実車を見に行ってもいいですか──?」
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