ポルシェがまた、面白いことを始めてくれました。
2027年モデルのタイカンに新しく搭載されるという「E-SHIFT」。 なんと、ステアリングのパドルを使って、バーチャルな「8速ギア」を切り替えられる擬似変速システムだそうです。
ちょっと前まで「EVに回生ブレーキやら、擬似的な変速なんていらん!」って言っていたはずのポルシェですが、手のひらをクルッと返してきました。
■ 効率よりも、走る「リズム」が欲しい
公開された公式動画を見ると、その作り込みがとにかくガチ。
https://www.youtube.com/watch?v=DCR-I_-FhTA
単にそれっぽい音がスピーカーから鳴るだけじゃなくて、
タコメーターの針がシフトアップに合わせて綺麗に跳ねる
ギアが繋がった瞬間の「クッ」というわずかな変速ショックを再現
なんならレブリミッターまで再現
EVの加速って、踏んだ瞬間からロケットみたいに滑らかに伸びていって本当に気持ちいいんですよね。ただ、長距離をドライブしていると、たまに「あの変速のリズム」が恋しくなるのも事実。
コーナーの手前でパドルを「カチッ」と弾いて減速して、立ち上がりでまたパドルを引く。あの操っている感覚、クルマとの一体感って、やっぱり理屈抜きで楽しいものです。
タイカンはもともとリヤに「本物の2速ギヤ」を積んでいる変態的なEVですが、今度はソフトウェアの力で8速の官能を上乗せしてきたわけです。
■ 先行する「韓国のアレ」と「日本のアレ」
実は、こうした「EVに騙しのギアを載せる」という試みは、ポルシェが初めてではありません。
真っ先に世界を驚かせたのは、韓国・ヒョンデの『アイオニック5 N』。2トン超の巨体を、パドルシフトの変速ショックと爆音(直4ターボからジェット機の音まで!)で振り回す仕掛けは、「EVをここまでおバカに、最高に楽しくできるのか」と世界中で絶賛されました。
https://www.hyundai.com/jp/ioniq5n
そして日本勢では、レクサスが『RZ550e F SPORT』に「インタラクティブ・マニュアル・ドライブ」として、RC FのV8を彷彿とさせる仮想8速マニュアルを投入したばかりです。こちらは緻密なモーター制御で「本物っぽいGの変化」を作り込んでいます。
https://lexus.jp/models/rz/features/fsport/
当初は「そこまでしてガソリン車の真似をしたいのか」と冷ややかに見る声もありました。しかし、実際に乗った人間からは「騙されると分かっていても、走りがリズミカルになって圧倒的に楽しい」と評価が一変したのです。
ここで面白いのがポルシェの立ち位置です。彼らはもともと技術者のプライドが高く、ギミックには否定的なスタンスでした。
その王者が、2027年モデルで「E-SHIFT」を全グレードに載せてきた。これは、ヒョンデやレクサスが切り拓いた「EVの楽しさは0-100km/hの速さだけじゃない。人間が心地よいと感じる『加減速の間』や『リズム』こそがスポーツドライビングの本質なのだ」という思想に、ポルシェが正式に太鼓判を押した、という歴史的な瞬間でもあるわけです。
■ で、ここからが最大の問題。
「へぇー、GTSとかターボGTみたいな超ハイスペックモデルだけの飛び道具でしょ?」
と思ってのんきに構えていたら、本国のプレスリリースを読んでひっくり返りました。
“available for all Taycan variants and body styles.” (すべてのタイカンのグレード、およびすべてのボディスタイルで選択可能)
……いや、全モデルにいけるんかい! ベースモデルでも、4Sでも、そして私の狙っているクロスツーリスモ(CT)でも、オプションで選べてしまうそうです。
■ さあ、どうする? 目の前には「店頭在庫」があるというのに。
実は、話はここで終わりません。 いま私の目の前には、ディーラーが確保している「即納可能な店頭在庫のクロスツーリスモ」という、あまりにも魅力的な選択肢があるのです。
「半年も1年も待たずに、今すぐこの極上のフラットライドが手に入る」 「価格改定前の、しかも今なら好条件を提示されている現行型」
EV本来のシームレスな滑らかさこそが、クロスツーリスモという快速エステートのキャラクターに一番似合っている。それは間違いなく大正解の、大人の選択です。今すぐハンコを押せば、来月には極上のロングドライブに出かけられる。
……でも、このタイミングで、あのポルシェの本気の悪ノリを見せつけられてしまった。
飽きたらスイッチ一つでシームレスなEVに戻せる機能。後から「やっぱり欲しかった」と思っても、ソフトウェアアップデートでは絶対に手に入らないパドルシフト。
今すぐ手に入る最高の実用性か、海の向こうからやってくる最新のガジェット精神か。ショールームの実車を前に、私の右足と左脳の戦いは、今夜もまったく決着がつきそうにありません。
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