前回の記事で、ポルシェディーラーにて体験した「ポルシェ・アクティブライド(PAR)」の物理の法則を無視したかのようなノーマルモードの乗り心地について語らせていただきました。
「一度あのフラットな世界を知ってしまうと、もう普通のサスペンションには戻れないかもしれない」
……そう締めくくった私ですが、あの全自動のマジック・カーペットに乗っているかのような感覚、車に近づいてドアを開けた瞬間にスッと車高が持ち上がるあのスマートな「おもてなし」の余韻が、どうしても頭から離れませんでした。
そして、瞬く間に売れていくアルピナD3(すでに在庫無し)を横目に「迷っているうちに極上の個体を逃してしまう後悔」だけは絶対に繰り返したくない、という思いが頭をよぎります。
当初のお目当ては、これから登場するカイエン・エレクトリック。 「あの魔法の足回りを手に入れたSUVが出るまで、じっくり待とう」
そう思っていたはずの私ですが、タイカンが持つ完成度と、今すぐあのフラットな世界を日常にしたいという衝動、そして一期一会の出会いによって、感情が理性を完全に上回ってしまいました。
■ 運命的だった、店頭展示車との一期一会の出会い
というわけで、近々我が家のガレージに新しい相棒を迎え入れることになりました。
タイカン4 クロスツーリスモ(J1II)です。
なぜこれほど電撃的にタイカンを契約することになったのか。実は、ディーラーのショールームに飾られていた1台との、文字通り一期一会の出会いがあったからでした。
当然、最初から自分好みに仕立てたオーダー車ではないため、仕様変更はできません。しかしこの個体は「近く試乗車としておろされる予定で、ディーラーがオーダーした1台」だったのです。
いわば、ポルシェのコンフィギュレーターを知り尽くした「通」が、そのセンスと知識を総動員して仕立てた模範解答。あるいは、あえて王道を避ける「外しのセンス」を詰め込んだ、確信犯的な仕様とも言えます。
だからこそ、オーダー変更ができないにもかかわらず、その独特な世界観に惹きつけられてしまいました。そんなプロの構成案に乗せられた、我が家の相棒となる仕様をご紹介します。
1. 塊感を際立たせる「ボルケーノグレー」と「21インチ」
ボディカラーは、金属の冷徹な塊感と高貴な艶やかさを両立する「ボルケーノグレー メタリック」。 クロスツーリスモは、フェンダーまわりをはじめ各所に独特の樹脂パーツが多用されるモデルです。そのため、明るいボディカラーだと樹脂の存在感が強く出すぎてしまうのですが、この個体はあえてトーンを落としたボルケーノグレーを選ぶことで、コントラスト的に樹脂パーツを目立たせなくして全体のトーンを綺麗に馴染ませているのかな?と推察。
足元には、「21インチ クロスツーリスモ デザイン ホイール」が組み合わされています。EVの航続距離や電費のセオリーを最優先に考えれば、小径の効率的なエアロ系ホイールを選ぶのが王道です。しかしこのクルマには、クロスツーリスモ専用の21インチが選ばれていました。専用のオリジナルデザインによるビジュアル面が優先されたチョイスのようです。
2. 絶妙な外しのセンス:「Race-Tex インテリア(レザーフリー)」
インテリアには、普段の私なら絶対に選ばないであろう、最大の「外し」要素がありました。 それが、レザーを一切使わない「Race-Tex インテリア(レザーフリー)」です。
いつもなら間違いなく全面レザー内装を選んでいたはずですし、正直なところ、全面レザー内装が持つ独特の高級感や艶っぽさはありません。しかし、それは今乗っているM4とて同じであり、そこは少し諦観というか、「BEVらしいキャラクター」として割り切ることにしました。
実際にシートをよく見てみると、その織り柄は古き良きポルシェの伝統に通じる「グレンチェック」が奢られていました。 ゴルフGTIなどもそうですが、ドイツのスポーツカーって、どうしてこうもチェック柄のファブリックシートが好きなのでしょうね。個人的には、ラグジュアリーEVのキャラクターに対して「ちょっと野暮ったいかな?」とも思うのですが、それすらもプロが仕掛けた確信犯的な「外し」として面白がり、楽しんでみることにしました。
特筆すべきは、このファブリックシートでありながら、しっかりと「シートベンチレーション」が組み込まれている点です。レザーフリーのテキスタイル内装にベンチレーションを組み合わせるこのチョイスは素晴らしいの一言。さらに、ポルシェのBEVにおいて「ポルシェ・エレクトリック・スポーツ・サウンド」を選択すると、車内全体に豊かな音響を響かせる「BOSEサラウンドサウンドシステム」が自動的にセット装備される仕様のため、BEVらしい静かな環境と、ドライビングの昂揚感を高める音響環境がどちらも外さずに調えられています。
3. シャシーの核心:これがあったから決めた「アクティブライド」
そして、この個体をその場で契約する最大の決定打となったのが、シャシーオプションの最高峰である「ポルシェ・アクティブライド(PAR)」に加え、回頭性を高める「PTV Plus」、そして低速の取り回しから中高速域の安定性までを支える「リアアクスルステアリング」までもが最初から組み込まれていたことです。
デモカー予定車とはいえ、これほど走りのダイナミクスに直結する超一級のシャシーオプションを贅沢にフル装備してあったあたり、やはりこの個体をコンフィグした担当者はただ者ではありません。「この足回りが今すぐ手に入るなら、もう迷う理由はない」と、背中を強力に押されました。
■ ほんの少しの「後ろ髪」と、これからの期待
完璧な理想通りというわけではなく、少しだけ後ろ髪を引かれる要素もあります。 それが、グレードが「4S」ではなく、ベーシックな「4」であること。
ポルシェに乗るなら、どうしてもモアパワーの文字が頭をよぎる瞬間がゼロといえば嘘になります。しかし、先日の試乗で体感した、BEV特有の強烈なゼロ発進のトルクと、何よりアクティブライドがもたらす「ノーマルモードでのフラットで濃厚なオンザレール感」の組み合わせは、この「4」であっても期待値を遥かに超えるダイナミクスを見せてくれるはず。パワーに頼らない、シャシーの良さで走るポルシェの奥深さを味わうのが今から楽しみです。
■ ブログの新しい扉が開く
これまで様々なハイパフォーマンスカーを乗り継ぎ、このブログでもそれぞれの個性を綴ってきましたが、とうとう、参考にするはずだったカイエンを飛び越えて、完全なるBEV(電気自動車)の世界へと足を踏み入れることになりました。
エンジンの振動も音もない静けさのなか、路面の凸凹をすべてPARサスペンションが超高速で消し去っていくあの贅沢な感覚を、間もなく日常として迎え入れることになります。
「駆け抜けてディーゼル、こんにちはPHEV」……から始まった私のカーライフ。 とうとう本格的なBEVの日常が幕を開けます。
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