A110はノスタルジックカーか?

A110は、不思議なクルマです。
現代のクルマでありながら、初めて見た瞬間から、どこか懐かしさを感じさせます。

デザインの流れがきれいに引き継がれているせいか、自然と頭に浮かぶのは、初代A110がラリーで活躍していた1960年代後半から70年代あたりの情景です。丸みを帯びたシルエットやコンパクトな佇まいが、時代の記憶を静かに呼び起こします。

そのためか、A110に接していると、つい古いクルマのような気持ちで扱ってしまうことがあります。

機械をいたわり、少し距離を取りながら向き合うような感覚です。
ところが実際に走らせてみると、その印象はすぐに裏切られます。

A110の中身は、意外なほど現代的です。
アルミボディによる軽さ、必要十分な電子制御、日常で不自由しない快適装備。最新鋭とは言いませんが、「過去の再現」にとどまるクルマではありません。

この見た目のノスタルジーと中身の現代性のギャップが、A110を特別な存在にしています。
懐かしさをまといながら、今の道を、今の感覚で走ることができる。レトロカーでもなければ、未来志向のハイテクカーでもない、独特の立ち位置です。

そんなA110を撮るのに、このレンズは割とぴったりだと思いました。
Nikon Zf + NOKTON 40mm F1.2 Asphericalという組み合わせです。

NOKTON 40mmは、描写が主張しすぎません。解像感やコントラストを前面に押し出すのではなく、曖昧さや余白を残してくれます。解放のF1.2で撮れば盛大にフリンジや周辺減光も出ますが、その写りが、A110の丸みや陰影、そして時代をまたぐような空気感とよく重なります。

40mmという画角も絶妙です。
クルマ全体を無理なく収めることもできれば、ヘッドライトやフェンダーラインといったディテールにも、自然に寄っていけます。A110を「被写体」としてではなく、「存在」として写せる距離感だと思います。

A110は、懐かしいのに古くありません。
NOKTON 40もまた、クラシックな佇まいを持ちながら、今の表現にきちんと応えてくれるレンズです。

その二つが重なったとき、写真の中にも、A110が持つあの不思議な時間の層が、素直に残ってくれる。
そんなことを感じながら、今日もシャッターを切っています。

コメント