感情編|使いきれない贅沢は、かえってストレスになる
M2を手放すという決断は、衝動でも勢いでもありませんでした。時間をかけて向き合った末に、ある一点で静かに腑に落ちた結論です。
感情面でいえば、使いきれない贅沢は、かえってストレスになる。これが、最も正直な理由でした。
M2は素晴らしいクルマです。走らせれば楽しく、エンジンもシャシーも疑いようがない。ただ、その楽しさは常に「抑制」とセットでした。
踏めば速すぎる。回せば持て余す。こちらが気を遣い続けなければ成立しない関係性は、次第に緊張を生みます。
「今日は気持ちよく走れた」よりも、「今日は我慢がうまくいった」という感想が増えていく。
本来、贅沢とは心を解放するもののはずです。それを所有することで、自分を縛ってしまっている。その違和感が、少しずつストレスへと変わっていきました。
M2と、そのリプレイス候補として頭に浮かんだクルマたちは、いずれも日常をこなす存在ではなく、非日常を楽しませてくれる存在です。だからこそ魅力的で、同時に扱いが難しい。
合理編|数字と現実が示した「距離の遠さ」
この感情を、数字と現実に落としてみると、結論はより明確になります。
高性能な内燃機関スポーツカーは、走らせてこそ意味があります。慣らしだけでも数千km、その後も定期的な走行が前提となる。一方で、季節要因や生活リズムを考えると、実際に走らせられる距離と頻度は限られます。
日常の使用シーンの大半は、市街地や一般道です。M2の性能が本領を発揮する速度域は、ほとんど訪れません。アクセルを踏めば一瞬で十分以上、エンジンの美味しいところに触れる前に、意識して抑える必要がある。
さらに、複数台所有という前提では、一台あたりの稼働率は必然的に下がります。高性能車は、稼働率が下がった瞬間に、「資産」から「負担」に性格が変わる。
こうして整理してみると、M2は性能が高すぎたのではなく、自分の日常との距離が遠すぎた。数字と現実は、その事実を静かに示していました。
次候補への思想的ジャンプ|非日常を削るのではなく、日常に寄せる
では、次に何を選ぶのか。
ここで重要なのは、非日常を否定しないことです。M2が与えてくれた高揚感や特別感は、確かに価値があった。
ただ、それを日常の中に無理に置かない。それが、次の選び方の軸になりました。
次に気になり始めたのは、「乗ろう」と決めなくても、気がついたらキーを手に取っているようなクルマです。
性能を解放する場所を探さなくていい。日常の速度域でも、クルマとの対話が成立する。走り終えたあとに、「今日は使い切れた」と思える。
それは、911やMAZDAロードスターとは、また少し違う位置にあります。派手ではなく、突出もしない。けれど、日常との接点が近い。
まだ結論は出ていません。
ただ、M2を手放したことで、「非日常をどう楽しむか」ではなく、「日常とどうつなげるか」を考えられるようになった。
その余白に、静かに入り込んできた一台がある——いまは、それだけで十分だと思っています。

はじめまして、
返信削除いきなりのコメント失礼いたします。
M2の記事を検索していてきょうたまたまこのブログを見つけました。私のM2は今年6月に納車されてまだ5,000㎞ぐらいです。同じスカイスクレイパーグレーでMTです。普段使いの車(足車?)にもある程度のスポーティーさを求め、かつ普通に荷物も載せられる車を探してM2に行きつきました。ところが1885mmという車幅、決して短くはない4580mmの長さ、やがて2トンにも近づく車重、また運転席からの見切りの悪さから、近々手放すことになると思います。スポーツカーとしての内容が立派なだけにちょいと下駄ばきのように出かけることができないことが残念です。さて、私はこれから買取屋さんを探すところから始まります。
FrankieZ様、はじめまして。
返信削除こんな僻地のようなブログに辿り着いていただき、そしてコメントまで、本当にありがとうございます。
同じスカイスクレイパーグレーのMT、しかも納車からまだ5,000kmとのこと。
文章を拝見していて、「そうそう、そこなんです」と何度も頷きました。
M2はスポーツカーとしての完成度は本当に高く、エンジンもシャシーもブレーキも文句のつけようがない一方で、車幅・全長・車重、そして見切りの悪さが、日常での“ちょっとそこまで”を確実に重たい行為にしてしまうんですよね。
立派すぎるがゆえに、下駄ばきのように使えない――この感覚は、私も強く感じました。
だからこそ、「悪い車だから手放す」のではなく、「自分の使い方とズレてきた」という判断になるのだと思いますし、それはM2に対してとても誠実な向き合い方だと感じています。
ご参考までですが、私は個人売買サービスのカババを利用しました。
買取店とはまた違うプロセスになりますが、クルマの背景や想いも含めて次のオーナーに渡せる点は、個人的には納得感がありました。
これからのクルマ選びも、きっとまた悩ましくも楽しい時間になるはずです。
よろしければ、またその後の話もぜひ聞かせてください。