SUV二台体制の終わりに——次の一台を考える

本来は、レンジローバースポーツを手放し、X3に乗り換えるつもりだった。
サイズをひと回り落とし、もう少し軽快な日常車にしようと考えていたのだ。

ところが、実際に乗ってみると話が変わった。
思っていた以上にX3は真面目で、整っていて、完成度が高すぎた。
確かに扱いやすいが、どこか“既視感”がある。
結局、レンジローバースポーツを残し、X3をセカンドカーとして迎えるという、
予定外の二台体制になった。

レンジローバースポーツとX3。
どちらも高性能で、静かで、上質。
けれど、似た美点が重なりすぎて、同じ論理で作られたようにも感じた。
重厚さで魅せるRRSと、端正にまとまったX3——
両車とも魅力的ではあったが、結果的にX3を手放した。

完璧なSUVがひとつ残り、そして気づいた。
“どうせ2台体制なら、互いに個性的なセカンドカー”がほしい。
完璧さでは届かないところに、車としての魅力がまだあるような気がした。

SUV二台体制の終わりは、次の一台を探す始まりでもある。


BMW Mシリーズ

X3 M50に乗ったことで、Mブランドの世界に引き込まれた。
力強さと正確さが共存し、速さは言うまでもなく、
その上での安定感と応答性の高さにこそMらしさを感じる。
走りに無理がなく、荒々しさの奥に知性がある。
あの完成度を、よりピュアに、より直接的に感じるならM2やM4になるのだろう。
“特別な車”というより、“走ることを日常に溶かし込んだ車”という印象。
レンジローバースポーツの“重厚”に対して、Mシリーズの“精密”という対比も悪くない。


ミドシップ

理屈で言えば一番いらないタイプだが、心のどこかが惹かれる。
アルピーヌ A110や718ケイマンに乗ると、目的地よりも過程が楽しくなる。
軽さと一体感が、走るたびに原点を思い出させてくれる。
所有する意味を問われれば答えに詰まるが、
「ただ運転が楽しい」という単純な理由が、すべてを上回る。
効率ではなく感情。理屈ではなく欲求。
そんな選択があってもいいと思う。


EVグランドツアラー

PHEVであるP550eの静けさに慣れてしまった今、BEVの世界は全く違和感がない。
音もなく、振動もなく、ただ前に進む。
最初は味気ないと思ったが、疲れずに長距離を走れることの価値に気づいた。
Taycanやe-tron GTのように、EVでも走りの質を追求したモデルなら、
“静かな速さ”がむしろ贅沢に感じられる。
感情を揺さぶる車ではないが、心を落ち着かせる車という意味で魅力的だ。


オープンスポーツ

最後に残るのは、結局こういう存在かもしれない。
Z4やボクスター、AMG SL。
合理的ではないが、乗るたびに空気が変わる。
幌を開けた瞬間、景色も音も風も、すべてが一気に流れ込んでくる。
移動が目的ではなく、“時間を味わうための手段”になる。
性能や実用性を超えて、「気分で選ぶ車」があってもいい。
そんなゆるさを受け入れられるようになったのは、
たぶん、RRSの“完璧”を経験したからだと思う。


完璧なSUVであるRRSの隣には、少しの不完全さがほしい。
どれも使い勝手で選ぶ車ではないが、どれも“気分”を変えてくれる。
合理性ではなく、納得できる無駄。
それをどう受け入れるかが、次の一台を決める鍵になりそうだ。


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